ふるさと納税、新制度後も注目したい地域は?「関係人口」貢献で地域おこしに参加

ふるさと納税、新制度後も注目したい地域は?「関係人口」貢献で地域おこしに参加

自分の好きな自治体へ寄付をすることで、税制控除が受けられる「ふるさと納税」。家計の節約効果の大きさや魅力的な返礼品からすっかり世に浸透したが、今年2019年6月1日に法律が改正され、新しい制度が導入された。「ふるさと」を冠する制度にふさわしく、地方やその自治体ならではの特色を打ち出す新制度の内容とともに、地方にかかわる手段のひとつとしてのふるさと納税のケースを考えてみたい。
返礼品が地場産品限定、地方を意識する契機に

2008年に導入されたふるさと納税は、出身地や本籍地などに関係なく任意の自治体に寄付をすると、翌年の確定申告で自己負担の2000円を超えた金額が所得税と住民税から上限までの全額控除される制度。寄付をした自治体からは、その地方の農作物などお礼の品が届くことで人気となり、2016年には受入額約2844億円、受入件数約1271万件に達している。一方、その地域と直接関係のない金券などを返礼品に設定するなど、自治体による納税者の奪い合いの過熱が問題となり、新制度の下では、返礼品は地場産品、返礼割合は寄付金額の3割以下で、寄付できる自治体も総務省が指定した対象地域となった。

(写真/PIXTA)

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都心に人が集中するなか、地方は人口が減少し、財政面でも厳しい状況が続いている日本において、人口や経済活動は都心に集中し、地方は厳しい現状におかれている。地方の経済の再生と資源を活用する地域創生は、政府が推進する大きなテーマのひとつだ。

その地域に住んでいなくても、地域や地域住民との関係を持つとして、近年、「関係人口」というキーワードが注目されている。その地方に移住した「定住人口」、または観光にきた「交流人口」でもなく、多様なかかわり方をするひとびとのことで、地域外の人材が地域づくりや変化を生み出すとして期待されている。政府は今年6月、2020年度から地方創成に向けた新たな戦略の基本方針案を示しており、「関係人口」拡大もその一つだ。

ふるさと納税は、生まれ育った地域を離れて東京や大阪など都市部に移住した人たちにとって故郷を意識する契機であり、また、国内の各地方の魅力を知ったり接点を持ったりする大きな機会にもなりうる。

ふるさと納税は、地方の「関係人口」として貢献できる

ふるさと納税を行うことは、関係人口としてその地域に貢献できるこということでもある。ふるさと納税の返礼品には、物そのものをもらうことができるものが目を引くが、「体験」を提供するものも多い。

(写真/PIXTA)

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和歌山県田辺市の返礼品は、同市にある世界文化遺産に登録されている「紀伊山地の霊場と参詣道」の熊野古道を語り部の解説を聞きながら歩く宿泊付きのウォークプラン(額によっては和歌山の特産である梅製品をもらえるプランもある)。寄付金は、間伐や枝打ちなど森林の手入れとともに、観光地にとって共通の悩みであるトイレや多言語案内の設置などの環境整備に使用されている。

また、来年にせまった東京オリンピック・パラリンピック開催を契機にしたスポーツ振興の機運を、地方から支えることもできる。富山県氷見市は、ハンドボール振興のため「春の全国中学生ハンドボール大会」を2005年から実施しており、寄付金は大会継続のための資金として使用されている。野球やサッカーのような競技人口の多い競技と違って、そのスポーツに親しむ人数が多いとはいえないマイナー競技には、甲子園や花園といった“聖地”の設定が難しいこともある。氷見市は小中学生のチームが全国優勝するなどハンドボールが盛んな土地であり、市民の意欲を満たす一方で、各都道府県の代表チームを応援するサポーターを市内の地域ごとに設定、他県からの参加者の応援をすることで、大会自体を盛りあげている。

かつてサッカーの日韓ワールドカップで、カメルーンのキャンプ地となったことで同国との交流が話題になった大分県の小さな村・中津江村が、現在でも同国との親交が続いているように、支援された氷見市だけでなく、サポーターとなった先の都道府県との相互の関係人口となれることも、ふるさと納税がもたらす恩恵といえるだろう。寄付者には大会決勝戦のチケットが届けられるが、氷見漁港でとれた海産物による郷土料理や氷見牛など、食べてうれしい返礼品も希望することができる。

岡山県の和気町では、日本最古の庶民の学校といわれる「閑谷学校」にゆかりのある地であることから、「教育の街」を推し進めることにふるさと納税を活用している。2016年から本格的に始められた公営塾では、特に英語教育に力を入れており、当初は中学生のみだった対象生徒も、小学校高学年の児童にも拡大。塾で学ぶ子どもたちの英検合格実績が報道で取り上げられたこともあり、同年の和気町への移住者は、前年の約3倍になった。ふるさと納税から、知識に関係するだけでなく定住人口の増加につなげられた好例といえるだろう。

お得さや返礼品のラインナップについつい目を奪われてしまうが、ふるさと納税の理念に立ち返れば、本当に気にかけたいのはその使途のはず。自分の寄付したお金がどのように使われているかで選べば、その地域への愛着や興味とともに、そこを訪れたい気持ちや実際に行った際の楽しみもふえるだろう。地場産品の返礼品を眺めるとともに、その地域への貢献に、改めて思いをはせてみたい。

引用元: suumo.jp