深呼吸したくなる場所──リゾートホテルに見る自然を感じる居場所づくり

深呼吸したくなる場所──リゾートホテルに見る自然を感じる居場所づくり

澄み渡る空。光と風。そして、生命のように明るい緑。自然の下は気持ちいい。何度体験しても、その感動は新鮮だ。思わず深呼吸したくなるこの気分を、日常で味わえたらどれほど心地いいだろう。自然を感じる居場所づくりの解を、リゾートホテルに求めたい。
戸外の自然と呼吸し合うような室内空間

重なり合った木々の梢から覗くホテルは、それ自体が地に根を張った大木のよう。福島県・裏磐梯の五色沼近く、美しい自然に恵まれた国立公園のすぐそばに、「ホテリ・アアルト」は立っている。
建物は、築40年になる企業の保養施設をリゾートホテルに改修したものだ。既存の骨格をそのまま活かし、柱もできるだけ動かさずに空間をホテルとして読み変えていった結果、13 の客室はそれぞれ間取りもしつらえも異なるものに仕上がった。

緑に囲まれて佇む「ホテリ・アアルト」(写真撮影/牛尾幹太)

緑に囲まれて佇む「ホテリ・アアルト」(写真撮影/牛尾幹太)

プロジェクトを率いた建築家、益子義弘氏は「豊かな自然環境全体を感じられる居場所づくり」を目指したという。すなわち、光や風、緑など「戸外の自然と呼吸し合うような室内空間」であり、「美しい景色をごちそうとして活かすような部屋づくり」だ。
「本物の自然を満喫したいなら、戸外に椅子を置いてしばらく過ごすのが一番でしょう。でも、そこに滞在することはできません。建築で少し保護された場所に身を置くと、結果として、外の自然もより印象深く感じられるものです」

ホテルのラウンジ。視線の高さを計算して設けた横長窓を緑が埋め尽くし、外の自然と一体感を味わえる(写真撮影/牛尾幹太)

ホテルのラウンジ。視線の高さを計算して設けた横長窓を緑が埋め尽くし、外の自然と一体感を味わえる(写真撮影/牛尾幹太)

特に重要なのが、開口部のつくりかただ。窓は大きければいいというものでもない、というのが氏の考え方で、景色と連携する窓の大きさや形、部屋の広さとのバランスを考慮して計画したとか。
また、室内外の明暗が強いとまぶしくて、外の緑が美しく見えない。氏はピクチャーウインドーの両脇に細かな格子を施した通風窓を設けて、光も風も緑も穏やかに呼び込む工夫をした。
ここでは内と外との境界が、それぞれを隔てるものとしてではなく、適度な階調でつなぐものとして存在している。

北欧家具でしつらえた部屋。磐梯山を遠望する見事な眺めを絵のように切り取るフィックス窓の両脇に、細格子が繊細な通風窓がある(写真撮影/牛尾幹太)

北欧家具でしつらえた部屋。磐梯山を遠望する見事な眺めを絵のように切り取るフィックス窓の両脇に、細格子が繊細な通風窓がある(写真撮影/牛尾幹太)

デザインを際立たせず、自然素材で心地よさを

強すぎる印象を避けるのはデザインも同様だ。形を頑張りすぎると、それ自身が際立って見えてしまう。「物やデザインが迫ってこない、むしろ後から、部屋のしつらえは覚えていないけれど何だか気持ち良かった、と思い返してもらえればいい」のだそうだ。
内装には、共用部も客室も主として自然素材が使われている。「室内で自然観をどんなふうにつくれるか考えたとき、自ずと柔らかな天然の素材を選択する」という。例えば断熱性に優れたペアガラスのアルミサッシも、室内側に木製の窓枠を施すことで優しい印象に仕上げた。都会の密集地でも、内装や家具などインテリアの構成の中で自然素材を使うことは可能だ。

自然素材には、見て、触れて、心やすらぐぬくもりがある(写真撮影/牛尾幹太)

自然素材には、見て、触れて、心やすらぐぬくもりがある(写真撮影/牛尾幹太)

床はキリやカラマツのむく材(写真撮影/牛尾幹太)

床はキリやカラマツのむく材(写真撮影/牛尾幹太)

明解なロジックも手の込んだ仕事も、完成すれば空間に溶け込んで消えていく。あるいは、空気となって残る。そこでは人も物もはしゃいだりしない。そっと身を置いて静かに楽しめるような「居場所」があるだけだ。

構成・取材・文/今井 早智

●取材協力
HOTELLI aalto(ホテリ・アアルト)

引用元: suumo.jp