知られざる「危険ヒートショック」とは? 香川、兵庫、滋賀がワースト3

知られざる「危険ヒートショック」とは? 香川、兵庫、滋賀がワースト3

死者は年間1万9000人にものぼるというのに、アンケートをとると「よく知らない」と答える人が約半数――。身近なのにあまり知られていない危険が「ヒートショック」です。今回はそんな「ヒートショック」が起きる原因ともいえる「室内温度差」を体験できる施設を訪問。その対策を探ってきました。
冬は家でも寒いのが当たり前? それが命取りになるかも!

そもそも、「ヒートショック」という言葉そのものはニュースなどで耳にしたことがある人も多いことでしょう。お風呂やトイレなど、家の中の急激な温度差より、血圧が大きく変動し、失神や心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こす現象をいいます。ただ、アンケート調査によるとこのヒートショックを「よく知らない」という人は約半数、危険だと思わない人は約8割にものぼります(※1)。つまり、なんとなく知っているけど、「ひとごと」だと思われているのです。

実はこのヒートショックによる浴室での死亡事故は年々増加傾向にあり、昨年は1万9000人もの方が亡くなっています。また、発生している県でいうと、香川、兵庫、滋賀がワースト3になり、ついで東京、和歌山という結果もあります(※2)。一方で、寒い北海道は沖縄についで死者数が少ないという結果に。

「地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター」報道発表資料より。高齢者1万人あたりCPA(入浴中心肺停止状態)の件数

「地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター」報道発表資料より。高齢者1万人あたりCPA(入浴中心肺停止状態)の件数

「北海道では、住まいの断熱性能が高く全館暖房が普及しており、バス・トイレも含めてどの部屋も均一にあたたまるようにしています。一方で、関東、近畿エリアでは、夏暑く、冬寒い。こうした過酷な気候条件のわりには住まいの断熱性能が高くないため、浴槽内でのヒートショック現象が比較的多く起きるのではないか、と考えられています」と話すのはLIXIL LHT営業本部 営業推進部の古溝洋明さん(以下同)。
 
「ただ単に、『ヒートショックが起きています』『断熱性や部屋間の温度差が大事なんです』と言葉で言っても、なかなか伝わらないんです。そこで、われわれは実際に『部屋の温度差』を体感していただける『住まいStudio』というショールームをつくり、多くの人に体験してもらっているのです」と言います。確かに論より証拠です、さっそく体験しに行ってみましょう。

エアコン設定温度、部屋の広さなどは同一条件なのに、室温には大きな差が

ショールームに設置されているのは、昔の家(昭和55年省エネ基準)と今の家(平成28年省エネ基準)、これからの家(HEAT20 G2グレード※)、の3タイプ。広さや間取り、エアコンの設定温度、外気温はすべて同じという条件で、室温がどう違うのかを体感します。
※HEAT20=「2020年を見据えた住宅の高断熱技術開発委員会」

3部屋のサーモカメラ映像を比較すると、暖かさの違いが一目りょう然。暖かい部屋だと心地よく、行動も活発になるそう(写真撮影/嘉屋恭子)

3部屋のサーモカメラ映像を比較すると、暖かさの違いが一目りょう然。暖かい部屋だと心地よく、行動も活発になるそう(写真撮影/嘉屋恭子)

「まず、体感してもらうのが、昔の家です。日本にある家のうち、約75%がこの基準以下だと言われています。エアコンの設定温度は20度で、部屋中心部は20度ですが、床の温度は16度です」。確かに寒く、足先が冷えるのがよく分かります。また、何より窓際がひんやり。寒いのが苦手な筆者は窓に近寄りたくありません。

さらに、扉で仕切られた隣の部屋(脱衣所とトイレの設定)はなおのこと冷えがきつく、「この寒さ、知っている。アレだ、実家だ……!」と思い出します。温度計は9度で、これだけで10度近い温度差に。そういえば、こうした寒さを活用し、「ビールを冷やす」「みかんやりんごを置いておく」「ケーキを置いておく」など天然の冷蔵庫としている家庭も多いことでしょう。

この寒さで、昔は「しもやけ」になっている子どももいましたよね(ご存じでしょうか……)。何より寒いので動くのがおっくうになりますし、エアコンの暖房で頭のまわりはむわむわしているのに、足元は冷え冷えとしているのも不快です。

昔の家。青い部分が多く、見るからに寒々しい。暖房がフル稼働していても、頭と足元で温度差がある(写真撮影/嘉屋恭子)

昔の家。青い部分が多く、見るからに寒々しい。暖房がフル稼働していても、頭と足元で温度差がある(写真撮影/嘉屋恭子)

「次に体感していただくのが、今の家です。床の温度は17.9度。だいぶ暖房が効いているのを実感できるのではないでしょうか。サーモカメラでも、だいぶ緑の部分が見えてきたと思います」。確かに、窓際も先ほどの部屋ほどは寒くは感じません。それでも、足先は冷えるので「満足か」と聞かれると「う~ん、でもちょっと寒いよね」というのが正直な感想です。ましてや隣室の脱衣所・トイレの寒さは、昔の家よりもちょいマシという程度で、「うーさぶい。トイレ行くの、めんどくさいな~」と生活している様子が目に浮かびます。

今の家。床温度は18度弱。まだまだ十分、暖かいとは言い難い(写真撮影/嘉屋恭子)

今の家。床温度は18度弱。まだまだ十分、暖かいとは言い難い(写真撮影/嘉屋恭子)

「最後がこれからの家です。これくらいの断熱性能を目指したいよね、という住まいです。ここでやっと床の温度が20度になり、冷えを感じにくくなるのではないでしょうか。また隣室の暖房をしていないトイレや脱衣場との温度差も5度以内におさまり、人が『不快』と感じにくくなくなります」

確かにスリッパなしでも歩けるようになるし、温かくて心地よくなります。また、試算(※3)では、昔の家では約2万8000円の光熱費がかかるのに対し、今の家では約1万3000円、これからの家では約7000円と約1/4になるのも驚きです。省エネになるので、地球環境にもやさしくなります。

これからの家。サーモカメラでも黄色が増えてきて、だいぶ過ごしやすく感じる。室内の頭部と床に温度ムラがないので心地よい(写真撮影/嘉屋恭子)

これからの家。サーモカメラでも黄色が増えてきて、だいぶ過ごしやすく感じる。室内の頭部と床に温度ムラがないので心地よい(写真撮影/嘉屋恭子)

3部屋の温度データを比較。人は部屋間の温度差が5度を超えると「不快」と感じるそう。これからの家には、熱交換換気システムを搭載し、しっかり換気しながら熱を逃さない工夫をしている(写真撮影/嘉屋恭子)

3部屋の温度データを比較。人は部屋間の温度差が5度を超えると「不快」と感じるそう。これからの家には、熱交換換気システムを搭載し、しっかり換気しながら熱を逃さない工夫をしている(写真撮影/嘉屋恭子)

冬の寒さだけでなく、夏の日差しを体験できる部屋もある。南向きの窓、西向きの窓から入る日差しの違い、遮り方の工夫を紹介してくれた(写真撮影/嘉屋恭子)

冬の寒さだけでなく、夏の日差しを体験できる部屋もある。南向きの窓、西向きの窓から入る日差しの違い、遮り方の工夫を紹介してくれた(写真撮影/嘉屋恭子)

自宅の温度を計ってもらおうと、LIXILのショールームでは、窓製品の見積もりをとった人に温度計を配布している(写真提供/LIXIL)

自宅の温度を計ってもらおうと、LIXILのショールームでは、窓製品の見積もりをとった人に温度計を配布している(写真提供/LIXIL)

室温が健康に与える影響は大きい。体験すると印象は大きく変わる

この「住まいStudio」は誕生してから約1年超が経過しますが、月間約1000人が訪れ、体感すると大きな変化があるといいます。

「正直なところ、はじめはみなさん、あまり期待されていらっしゃらないようなのですが、『体験するうちにこれが快適な温度なんだな』と納得されていますね。特に女性は、当初はキッチンや間取りに注目されているのですが、体感後は『家は断熱! 温度差はないほうがいい!』という方が多いですね」といいますが、まったく同感です。

実は筆者、40代に入り高血圧と診断され、寒いと血圧が上がるようになりました。いわばヒートショックになりやすい「予備軍」なので、ひとごとではありません。では、今からできる対策はどのようなものがあるのでしょうか。

昔の家、今の家、これからの家の断面模型。これからの家は断熱材がしっかりと入り、窓の断熱性・気密性が高く、熱が逃げにくくなっている(写真撮影/嘉屋恭子)

昔の家、今の家、これからの家の断面模型。これからの家は断熱材がしっかりと入り、窓の断熱性・気密性が高く、熱が逃げにくくなっている(写真撮影/嘉屋恭子)

「部屋間の温度差をなくすには、建物そのものの気密・断熱性を高める必要があります。ただ、こうした性能は、住んでから改修するのは難しいもの。これから住まいを建てる方に関しては、こうした気密・断熱性能に注目し、検討してほしいですね」

ただ、日本にある家の多くは「昔の家」と同じ水準かそれ以下の断熱性能になります。

「今ある住まいに関しては、開口部、つまり窓の断熱性能を高めるリフォームで対策できます。内窓を追加する、今ある窓をハイブリッド窓にするといったリフォームでも、断熱性は大きく向上します。また、脱衣所や浴室の断熱性を高めるリフォームも比較的かんたんな工事で行えます」

今回、部屋内の温度差を体験してみて、もしかしたら温度差は想像以上に私たちの健康を害しているのかもしれないな、と思いました。「冬は寒いのは当たり前」「がまんすれば大丈夫」と思い込む前に、今一度、住まいの温度についても考えてみてほしいと思います。

●取材協力
LIXIL 快適暮らし体験 住まいStudio
※1 STOP!ヒートショック 東京ガス都市生活研究所 
※2 東京都健康長寿医療センター研究所
※3 試算=studio各部屋を12/1~3/31の暖房期間にエアコン暖房した場合の電気代

引用元: suumo.jp