「民泊新法」が6月15日に施行、これからの民泊はどう変わる?

「民泊新法」が6月15日に施行、これからの民泊はどう変わる?

2018年6月15日に住宅宿泊事業法(いわゆる「民泊新法」)が施行され、住宅宿泊事業者は届け出をすれば、民泊を行えるようになった。民泊新法が施行されて、民泊は今後どうなるのだろう?【今週の住活トピック】
「住宅宿泊事業届出住宅のための外国人観光旅客向け多言語文例集」を作成/東京都民泊新法で義務付けた「多言語による利用者向けの説明」の手引きに

民泊新法では、施設の利用案内や生活環境を守るためのルールを外国語で適切に案内することを義務付けていることから、東京都では、民泊利用の外国人観光客向けの文例集を作成して、後押しをしている。東京都が作成した、多言語文例集の内容を見てみよう。

●多言語文例集の一部
多言語文例集の一部(出典:東京都「住宅宿泊事業届出住宅のための外国人観光旅客向け多言語文例集」より)

多言語文例集の一部(出典:東京都「住宅宿泊事業届出住宅のための外国人観光旅客向け多言語文例集」より)

このように具体的な文例が日本語、英語、中国語、韓国語で紹介されている。なお、「繁体字」は台湾、香港、マカオで、「簡体字」は中国やシンガポール、マレーシアで使われている言語のようだ。

文例の内容は多岐にわたり、次のような事項に分けて文例が紹介されている。
•届出住宅の設備の使用方法に関する案内
•最寄り駅等の利便施設への経路と利用可能な交通機関に関する情報
•騒音の防止のために配慮すべき事項
•ごみの処理に関し配慮すべき事項
•火災防止のために配慮すべき事項
•避難経路
•火災、地震その他の災害が発生した場合における通報連絡先に関する案内

民泊新法のルールは?どんな規制がある?

2020年の東京五輪で観光客の宿泊施設不足の対策として、国や東京都では民泊を促進したいと考えている。

政府は以前から民泊促進のために、旅館業法の規制緩和や国家戦略特区の活用などを行ってきた。しかし、旅館業法(簡易宿所)では住宅地での営業ができない、特区民泊では原則1室25平方メートル以上が必要などのほか、衛生面や安全確保面での厳しい条件などもあり、ハードルが高いとして違法な民泊運営が後を絶たなかった。

違法民泊が騒音やゴミ出しなどの近隣トラブルにつながるとして、健全な民泊を促進するために施行されたのが民泊新法だ。民泊新法の特徴は、民泊に関わる3つの事業者(「住宅宿泊事業者」「住宅宿泊仲介業者」「住宅宿泊管理業者」)に対してそれぞれ届け出や登録を義務付けて、監督できるようにしていることだ。特にトラブルの多い「家主不在型」の住宅宿泊事業者には、住宅の管理を住宅宿泊管理業者に委託することを義務付けることで、仲介業者と管理業者の双方からもチェックできるようにしている。

民泊新法の対象となる事業者(出典:国土交通省「民泊制度ポータルサイト」より転載)

民泊新法の対象となる事業者(出典:国土交通省「民泊制度ポータルサイト」より転載)

民泊新法では、旅館業法(簡易宿所)や特区民泊に比べると条件が緩くなっていて、特に宿泊室の面積が小さい「家主同居型」の場合は、過度な条件を付けないようにしている。それでも、住宅宿泊事業(民泊)の届け出を行っていることがわかる標識を掲げること、本人確認や宿泊者名簿を管理すること、周辺住民からの苦情などに常時対応すること、2カ月ごとに届け出先に定期報告をすることなどの必要がある。

写真/PIXTA

写真/PIXTA

一方で、旅館業界や賃貸住宅業界では事業を圧迫するとして、民泊新法には一定の規制を求めてきた。その結果、民泊として提供できる日数を180日以内とするなどのルールも設けられた。ただし、地方自治体が独自の条例を制定することで、ルールを変えることができるとしている。

地方自治体のほうでは、地域トラブルを避けるために、規制緩和ではなく規制強化に乗り出す動きが目立った。複数の自治体では住宅地での民泊営業を禁止したり、180日以内の制限をさらに短縮したりなどの条例を制定した。また、分譲マンションの場合は、それぞれの管理規約に民泊禁止を盛り込む動きも加速している。

民泊の普及にはまだ時間がかかる?

民泊新法の施行に合わせて、次のような民泊に関する調査も実施されている。

リビン・テクノロジーズの調査によると、民泊の制度には63.0%が賛成するも、57.8%は「民泊を利用したいと思っていない」という結果だった。

クレアスライフの調査によると、不動産投資オーナーで「所有物件を民泊にしたいとは思わない」人は77%だった。

楽天コミュニケーションズの調査によると、民泊運営事業者に「今後も運営物件を増やしたいか」について聞いたところ、大幅に増やすが11.3%、増やすが36.0%、現状維持が35.7%、減らすが7.0%、大幅に減らすが3.0%、やめるが7.0%だった。

民泊自体は一定の評価を得ているものの、民泊に消極的な人の理由を見ると、総じて近隣や他の居住者などとのトラブルや住宅の劣化が進むことなどを懸念していることがうかがえる。また、賃貸経営をする不動産投資オーナーと民泊運営事業者では、民泊に対する考え方が大きく異なる点も注目したい。

すでに民泊を運営したり利用したりする一定の層については民泊に積極的であるが、すそ野が広がるにはまだ時間がかかると考えてよいのだろう。

民泊新法の施行で、健全な民泊は増える?

さて、民泊新法による届け出は順調に進んでいるのだろうか?
2018年3月15日から届け出の受付が始まったが、届け出は伸び悩んでいる。6月になって駆け込みの届け出もあったようだが、さまざまな規制にハードルの高さを感じたり、煩雑な届け出の手続きを嫌って、届け出を断念した民泊オーナーも多いようだ。

他方で、観光庁は民泊物件をインターネットなどに掲載する仲介業者に対して、無許可民泊物件を掲載しないように求めている。民泊仲介大手のエアビーアンドビーが、無許可や届け出予定のない民泊物件の掲載をやめたために掲載数が大幅に減少したり、6月15日以降の予約のキャンセルを直前で行ったことで利用者が混乱したりといった報道が話題にもなった。

このように、施行直後の現状は、民泊新法による民泊の届け出が低調なうえ、民泊仲介サイトの掲載物件も減少している。健全な民泊の促進が目的だから規制が厳しいということだろうが、健全な民泊として運営しやすい工夫やサポートを充実させていくことも求められる。

とはいえ、民泊に注目した新たなサービスも増加している。民泊事業者向けのセキュリティサービスや保険の提供がも始まった。さらに、チェックインや鍵の受け渡しの負担軽減のために、ホテルのフロントで代行したり、コンビニに専用機器を設置したりといったサービスも始まった。

健全な民泊の普及には、個人が運営事業者となる場合の負担軽減のサポートや、ホテルや賃貸住宅とは異なる付加価値の提供なども必要で、まだ課題も多いようだ。民泊はまだ新しい宿泊サービスなので、ルールの見直しやバックアップ体制の強化などを図りつつ、日本らしい成熟したサービスへと育ってほしい。

●参考:民泊に関する情報提供サイト
・国土交通省「民泊制度ポータルサイト」
・東京都産業労働局「住宅宿泊事業(民泊)」サイト

引用元: suumo.jp