「『勝ち組不動産』の条件を教えてください」 住まいのホンネQ&A(2)

「『勝ち組不動産』の条件を教えてください」 住まいのホンネQ&A(2)

「住まいのホンネQ&A」は、誰もが知りたい住宅に関する様々なQ&Aについて、さくら事務所創業者・会長の長嶋修氏にホンネで回答いただく連載です。
第2回の質問は「『勝ち組不動産』の条件を教えてください」。
第1回の「東京五輪前に家を買いたい。選び方のコツはありますか?」という問いに対して、長嶋氏はまず「価値が落ちない家を買うこと」をすすめていました。では具体的にどんな立地を選べばいいのか。またどんな建物なら価値が上がる、もしくは落ちにくい、いわゆる「勝ち組不動産」なのか。今回のコラムで解説します。

「マンションは駅7分以内しか買うな!」の理由

不動産の価値は、1にも2にも3にも「ロケーション」ありきです。どんなに立派な建物でも立地が悪く、次の買い手・借り手が現れなければ不動産評価上の価値は「ゼロ」。要は売れる・貸せるといった「市場流動性」がどの程度あるのかということです。

拙著「不動産格差」(日本経済新聞出版社)には「マンションは駅7分以内しか買うな!」といったキャッチコピーがついていますが、これには理由があります。というのは、新築マンションデベロッパーの用地仕入れ担当者にヒアリングしたところ「駅から求められる距離は年々短くなっており、昨今では駅7分を超えると用地仕入れには非常に慎重になっている」といった見立てを複数耳にしていたためです。

トータルブレイン社の調査結果によれば、17年の首都圏新築マンション販売は「徒歩8分」で明暗が別れた模様。徒歩9分以上になるととたんに販売が苦戦していることから、「今や駅徒歩8分以内の分譲はマーケットの常識」だとしています。

総人口や世帯数が減少し、少子化・高齢化が進展する中で「人口動態」は不動産の需要そのものですから、このままいけば不動産市場が全体として資産価格を下げていくのは必然とも言えます。前回述べた通り、実際には市場が大きく3極化しており「都心」「駅近」などのワードで評される立地はますます強さを増し、それも駅距離で選別が進んでいるわけです。

「ロケーション」というのは必ずしも「駅からの距離」だけを意味するものではありません。例えば港区・渋谷区などの都心地区には「麻布」「青山」「広尾」といった、駅からの距離は遠いのに不動産価値が非常に高いエリアもあります。

あとは例えば、東京五輪開催に沸く都心湾岸地区のマンション価格がこの数年で大きく価格上昇したのは周知の通りですし、2005年開業のつくばエクスプレス開業で周辺地が恩恵を受けたのも事実です。神奈川県では武蔵小杉・川崎・港北ニュータウンなどがやはり再開発の恩恵を受け、山手線品川・田町間にできる新駅と再開発効果、2027年まで続く渋谷駅周辺の再開発は、やはり周辺不動産の価格上昇をもたらします。

一戸建ての場合は多くのケースで必ずしも駅から近いわけではなく、必ずしも駅距離にこだわる必要もありませんが、この場合はまた別のロケーション要素が重要になってきます。例えば「学区」。小中学校の評判が良いところでは子育て世帯を引きつけ、不動産価格が高止まりしますし、近隣に美しい公園がある、買い物利便性が高いといった要素もロケーションのうちです。

不動産選びが「自治体選び」になる?

さらに今後必要になるのが「不動産選びは自治体選びである」といった視点です。前述したとおり、本格的な人口減少や少子化・高齢化はこれから始まります。すると自治体による行政コストはかさむ一方です。税収は減少し、上下水道の修繕やごみ収集などもままならないといった事態に陥る自治体が、今後出てくる可能性がありそうです。

例えば千葉県流山市は「子育てするなら流山市」といったキャッチコピーで、担税力の高い、つまり働いて稼ぎ、納税してくれる市民を増やそうとしています。子育て世帯に焦点をあて、おおたかの森駅、南流山駅の二か所に送迎保育ステーションを設けるなど子育て世帯に優しい政策をとり、UターンやIターンといった子育て世帯の誘致に成功しています。もっとも、そうした政策がうまくいきすぎ、今度は小学校などが足りなくなるといった課題にも直面しています。

いずれにせよ、税収が豊富になれば、それを原資にますます行政サービスを充実させることができ、さらにその街の魅力も高まるといった循環が巻き起こります。するとその自治体の不動産価値は上昇、市民も資産も増え、自治体は税収の多くを占める固定資産税収入のアップも望めます。

国土交通省によれば、2050年には日本の人口は約9700万人に減少、全国の6割以上の地域で、人口が2010年時点の半分以下になるという試算を発表しています。自治体運営を「経営」と捉えて運営に取り組むところとそうでないところの差は、今後ますます強いコントラストで浮かび上がり、自治体選びはやがて、不動産探しの重要なポイントだと認識されるようになるでしょう。

ロケーションの次は「建物のコンディション」

こうした「ロケーション」ありきを前提とした上で、次に重要になるのが「建物のコンディション」。今年4月には、中古住宅取引の際にホームインスペクション(住宅診断)の説明が義務化されます。インスペクションの実施が義務化されるわけではなく、説明が義務化される点には留意が必要ですが、「中古住宅はよくわからない」といった漠然とした懸念を払拭する道を創るため、イギリスやアメリカ・カナダ・オーストラリアではあたり前の様に行われているインスペクションを常識化しようといった取り組みです。

これまで日本の住宅は「新築で買ったときのその価値が最も高く、10年で建物価値は半値、25年程度でほぼゼロになり、土地値となる」(一戸建ての場合)のが常識でしたが、築年数に関係なく、コンディションの良い中古住宅は価値が落ちない、もしくは落ちづらいといった市場を創るための第一歩と言えます。

よく「木造住宅の法定耐用年数は22年、鉄筋コンクリート造のマンションは47年」だといった論を見かけますが、これは税制上の話に過ぎず、市場の評価とは連動していません。

「建物の寿命」については誤解も多いのも実情です。国交省がこれまで公表してきた資料では、木造住宅の寿命は27年ないしは30年、マンション(RC/鉄筋コンクリート造)は37年としているケースが多いのですが、こうした数字は、取り壊された建物の築年数、あるいは建物の新築数を取り壊し数で除した数字であり、実態を反映していません。

早稲田大学の小松教授らが行った「建物の平均寿命推計」の最新調査(2011年)によれば、人間の平均寿命を推計するのと同様の手法を建物で採用した場合、木造住宅の平均寿命は65年としています。

マンション(RC/鉄筋コンクリート造)の寿命には諸説あり、例えば、117年(飯塚裕/1979「建築の維持管理」鹿島出版会)、68年(小松幸夫/2013「建物の平均寿命実態調査」)、120~150年(大蔵省主税局/1951「固定資産の耐用年数の算定方式」)など。実際には配管の種類や箇所にも大きく左右されますが、思いのほか長持ちするイメージではないでしょうか。

「管理組合」が資産性に結びつく日も近い

マンションの「管理組合の運営状況」もやがて資産性に結びつく日も遠くないでしょう。

管理状態が良好でムダもなく修繕積立金が潤沢なマンションと、割高な管理費を垂れ流し、修繕積立金が足りず建物修繕もままならないといったマンションでは、これまでさほど資産格差が見られなかったのが実情ですが、未来の不動産市場では、同条件のマンションであっても管理組合の運営状態によってかたや5000万円、かたや2000万円といった価格差が現れることになるはずです。

s-長嶋修_正方形.jpg長嶋 修  さくら事務所創業者・会長
業界初の個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクション(住宅診断)を行う「さくら事務所」を創業、現会長。不動産購入ノウハウの他、業界・政策提言や社会問題全般にも言及。著書・マスコミ掲載やテレビ出演、セミナー・講演等実績多数。【株式会社さくら事務所】

引用元: suumo.jp