わが家に合った予算・ローン[2] 共働き夫婦、住宅ローンは夫のみ? 夫婦でペアローン?

わが家に合った予算・ローン[2] 共働き夫婦、住宅ローンは夫のみ? 夫婦でペアローン?

女性の社会参画が進み、共働き世帯が6割を超える昨今。住宅ローンを組むときにも、夫だけではなく妻も融資を受け、住宅ローンの金額を増やしたい、と考える方もいるでしょう。
そこで今回は、夫婦でペアローンを組むことにどのようなメリットがあり、どのようなリスクがあるのかを「ホームローンドクター」の淡河範明(おごう・のりあき)先生に教えていただきます。

ご相談者はSさん夫婦。33歳の夫と31歳の妻の2人暮らしです。
埼玉県のさいたま市内にマンションを購入したいと検討しており、住宅ローンの融資を夫のみで受けるのか、それとも妻も融資を受けるのかで迷っています。夫婦ともに収入がある場合は、夫婦ペアローンを利用したほうがいいのでしょうか?【連載】教えて、ローンドクター! わが家に合った予算と、借り方・返し方
住宅購入に悩みはつきませんが、「予算」は最も大切なポイント。年収の何倍までとか、頭金はこれくらい必要などいろいろな情報があふれていますが、人によって、物件によって、タイミングによって変わるため、実際にはみんなに通用するセオリーはありません。いったい「わたし」「わが家」にとってはいくらの物件を買えばいいのか? ローンはどう組めばいいのか? そんな疑問に「ホームローンドクター」である淡河範明(おごう・のりあき)先生がビシッとお答えいたします。(イラスト/松元まり子)

(イラスト/松元まり子)

夫婦のペアローンは融資額を増やし、節税効果も発揮してくれる!

淡河範明先生(以下、先生):今日は住宅ローンの融資を受けるに当たり、ペアローンを利用するべきかどうかというご質問ですね。

夫:はい、私の年収が530万円なのですが、今購入を検討しているマンションを買おうと思ったら、4000万円必要で。なんとか融資は受けられそうなのですが、私の年収から考えるとかなりギリギリの金額かなと……。

妻:私も派遣で一定の収入があるので、住宅ローンの一部を負担できないかと思っています。

夫:もう一つ、できれば早めに完済して、老後は住宅ローンの心配をせずにのんびり暮らしたいんです。20年くらいで住宅ローンを組みたいんですが、私と妻の年収でも完済できますか?

先生:お一人だと借りられる金融機関が限定されますが、夫婦でペアローンを組めば、借りられる金融機関を増やすことができるだけでなく、コスト面でもメリットが出せます。ペアローンのメリットは、互いが住宅ローン控除を利用できることですから、単独でローンを組むよりも手元に残るお金は多くなるでしょう。
一方、20年で完済するという考えは危険かもしれません。

夫:なぜですか? 金利という無駄な出費が減ると思うのですが。

先生:4000万円を20年で完済しようとすると、金利1.5%で融資を受けても毎月20万円弱を返済しなくてはいけません。手取りの月収は夫婦合わせてどれくらいでしょうか?

妻:えーっと……ボーナスを別に考えると夫婦で45万円ぐらいですね。

先生:つまり45万円の収入のうち、20万円も住宅費に充てなくてはいけない。これでは手元にお金が残らないギリギリの生活になってしまいますし、もし将来お子さんを欲しいと考えているのであれば、教育費などの貯金もままならないでしょう。
また、マンションは管理費や修繕費もあります。
今は低金利ですから、できるだけ多くのお金を借りて手元に残せるお金を増やすほうが得策です。

夫:そうなのでしょうか……? 住宅ローンが退職後にも残ると不安になってしまいます。

先生:夫のKさんは65歳の定年退職まで32年もあります。それに妻のYさんがお子さんを出産し、産休等で働けなくなると、Yさんのローンは育児休業給付金と貯金から返済することになりますから、毎月の返済分は抑えて余裕分は貯蓄に回しておくべきです。

妻:たしかに! 子どもも欲しいですし。

(イラスト/松元まり子)

(イラスト/松元まり子)

先生:そこで20年間の固定当初金利優遇ローンを利用しましょう。三井住友信託銀行でしたら当初20年間の金利が1.15%、21年目以降は変動金利となり全期間1.075%になった前提です(2018年7月31日時点)。住宅ローンの融資を単独で受けた場合と、ペアローンで融資を受けたときの夫婦の負担比率を変えて数パターン、シミュレーションをしました。

ホームローンドクター淡河先生が作成したSさん夫婦の住宅ローン返済シミュレーション。4パターンの夫婦の住宅ローン負担比率に対し、実質負担額がどう変化するかを試算

ホームローンドクター淡河先生が作成したSさん夫婦の住宅ローン返済シミュレーション。4パターンの夫婦の住宅ローン負担比率に対し、実質負担額がどう変化するかを試算

Sさん夫婦:わぁ! 総支払額が数十万単位で変わってくるんですね!

先生:そうなんです。単独で融資を受けるより、ペアローンを利用すれば、諸費用は多少かかりますが、それを補って余りある住宅ローン控除が受けられます。

(イラスト/松元まり子)

(イラスト/松元まり子)

ペアローンを組むときは、持分設定と離婚リスクに要注意!

先生:ただ、ペアローンで注意点がないわけではありません。上の表でも「住宅ローン負担比率」という数字がありますが、夫婦それぞれが住宅の購入に支払う金額(住宅ローン負担比率)と、登記上の持分設定を実状に沿ったものにしておかないと、贈与税が発生する可能性があります。

妻:住宅ローンの負担比率にかかわらず、夫婦で一緒に購入するから所有権は半々にする、という形ではダメですか?

先生:離婚時の財産分与は別ですが、所有権は費用を負担している割合と同等にしてください。例えば4000万円の住宅購入に際し、妻が800万円の支払いだと夫と妻の負担は3200万と800万で4:1です。
ところが、登記時に所有権の持分設定を1:1にしてしまうと、2000万円ずつを負担して住宅を買ったことになります。この差額の1200万円を夫から妻に贈与した、と見なされるリスクがあるのです。

(イラスト/松元まり子)

(イラスト/松元まり子)

夫:それは問題ですね。

先生:まずは、支払っている税額と借入金額の関係を確認しましょう。もし、借入金額の1%以上の税金を払っているなら、所有権の持ち分比率をできる限り費用負担と同等の設定にすることで、控除の額が少なくなるのを避けられます。ただし、持ち分以上のローンがあっても、超過分の借入金については住宅ローン減税は受けられないので注意が必要です。

また、ペアローンの最も大きなリスクは「離婚」だということも覚えておきましょう。住宅を購入するときは夫婦ともに仲が良く、離婚など考えていない方が多いです。だからこそ、万一離婚したときにその後の所有や住宅ローンの返済をどうするか、先に決めておいてほしいのです。

Sさん夫婦:分かりました。あとで2人で話し合ってみます。

「退職時にいくらの資産を用意できるか」を考えて人生設計をしよう

先生:あとは無理のない返済で、手元にフリーキャッシュフローを残すことを意識してください。末永く、毎日の生活を楽しみながら暮らしていくには「何歳までに」「純資産(※)をどの程度つくれるか」を決めて行動することが重要です。

定年退職時の年齢が65歳、平均寿命の85歳くらいまで生きるとして、その間の20年間「年金と手持ちの資産で不自由のない生活を送れること」を目標としましょう。65歳時点で貯蓄がいくらあったら、安心して老後を送れると思いますか?

※純資産:会計用語で「会社の資産総額から負債総額を差し引いた金額」のこと。ここではそれを家計に当てはめ、保有している金融資産からローンなどの借金等を引いた自分の資産を指す

妻:えっと……1000万円とか2000万円とかでしょうか?

先生:ズバリ、私が65歳時点の参考貯蓄額として提唱するのは、以下の3つのプランです。

●1500万円:シンプル生活 →必要最小限の貯蓄で最低限必要な出費をまかなえるプラン
●3000万円:ピンピンコロリ →老後の生活を楽しみながら健康に過ごし、医療費があまりかからなかった場合のプラン
●6000万円:ゆうゆう生活 →海外旅行や趣味を楽しみながら、余裕のある老後を過ごすための金額

退職時にローンを完済していても、手持ちに現金がないのでは意味がありません。デフレの今は、繰上返済にこだわるより貯金を確保しておくほうが、ずっと生活が豊かになるのです。また、ゆっくりローンを返して、手元にある程度の現金を残しておくことは、急な出費が必要になったときのリスク対策にもなります。

(イラスト/松元まり子)

(イラスト/松元まり子)

妻:私たちは30代だから、1年間で100万貯金できれば、ピンピンコロリプランには到達できそう、ってことですね。

先生:長い人生において、さまざまな経済的リスクを回避する一番の対策はまず「収入を増やすこと」、次に「手元にある程度の現金をしっかり残しておくこと」です。今回のプランでは現状の収入でも無理のない範囲で計画を立てていますが、収入を増やすための努力もぜひ忘れないようにしてください。

夫婦:はい!

夫婦ペアローンは融資額を増やすことにも役立ちますし、住宅ローン控除の効果でキャッシュフローが増えるというメリットがあります。生活の豊さを考えれば、無理に早く返済するだけではなく、手元にお金を残せるように返済していくことも大切だということが分かりました。

ただし、夫婦持分の数字にはよく注意しておかないと贈与税が発生しかねませんし、離婚というリスクが伴うことも。まずは夫婦でしっかり話し合い、何歳までにいくら貯めておきたいのか、どのように返済していくのかを決めておきたいものですね。

s-淡河 範明淡河 範明 ホームローンドクター
日本興業銀行、エル・ピー・エル日本証券を経て、住宅ローン専業コンサルティング会社であるホームローンドクター株式会社を設立。利用者の立場にたち、住宅購入時の資金計画、住宅ローンの選び方を新しい方法で提案している。著書に『住宅ローンを賢く借りて無理なく返す32の方法』『住宅ローン借り換えマジック』などがある。

引用元: suumo.jp